シリーズ・アクロイヤーが来ない日は 番外編

「はっぴぃ バレンタイン」         GIEN

   

麻美ちゃんはやさしい
本当にいい子だ
ちょ〜っと気が強すぎるところもあるが、勇気があってかわいくて、本当に最高の女の子だと思う
特に最高だと思うのは、いつもおいしいお菓子を作ってきてくれるところだ
今日だってほら、オレのために、こぉぉぉんなにでっかいチョコレートを・・・・・・・
「なぁにやってんだよ、ウォルト!」
「のぐわふぁっ」
上に座って一人で悦に入っていたハートチョコレートを耕平にいきなり引っこ抜かれ、ウォルトは勢い良く顔面から机に落下した。
「なにすんだよ耕平!そのチョコはオレんだろ!?」
顔の痛みよりなにより、チョコレートを取り上げられた事に憤慨したウォルトは、赤く腫れた鼻の頭とおでこを押さえながら耕平に猛然と抗議をする。
「オレのチョコ返せ返せ〜っ!」
「ハァ!?なんでこれが君のなのさ!?」
「いいか、よく見ろ耕平!そこにちゃんと書いてあるだろが!『ミクロマンのみんなへ 麻美より』ってな!ほら分かったら早く返せぇっ!」
「・・・・・・あのさぁウォルト」
耕平は大きな溜息をついた。
「いっちばん大事なトコ、わざと無視してない?」
そういってチョンチョンと指差す先には『耕平くん祐太くん そして』の文字が。
「んあ・・・?そんな字・・・最初ッからあったっけか?」
「あったよ!も〜、ウォルトがお尻にしいて座ってたんじゃないか!」
「あ〜、そうでしたかねぇ・・・」
耕平が頭を抱えているところへ、祐太がバタバタと階段を駆け上がってきた。
「にいちゃん!麻美ちゃんにもらったチョコ、見せて見せて!」
「ああ祐太」
耕平はなんとか気を取り直し、麻美お手製の大人の手の平ほどもあるバレンタインチョコを弟に向かって高く掲げてみせた。
「ジャ〜ン!これさ!」
「うわぁ!すごい!おっきいねぇ!」
「ほら、落っことすなよ」
自分の頭上で受け渡されるチョコレートを、机の上からウォルトがヤキモキしながら見上げている。
「・・・『耕平くん祐太くん そして ミクロマンのみんなへ 麻美より』・・・すごいよね、ちゃんと字も書いてあるんだね!ねぇねぇにいちゃん、みんな呼んではやく食べようよ!」
「オレオレここここ」
自分の鼻先を必死で指差しアピールをしている約一名はとりあえず置いておいて、祐太は机の引き出しを開け残りの4名を呼び出した。
2月14日午後。今日は楽しいバレンタイン。
「・・・つまり、『バレンタイン』というのは、女の子が男の子にチョコレートをプレゼントする日なんだね?」
「そゆこと」
「オレ、男の子」
「そして特に仲の良い相手には、手作りのチョコレートを渡すというわけか」
「そうそう」
「オレ、仲良し」
「手作りでしかもわざわざメッセージまで書いてあるということは、つまり耕平と祐太は麻美ちゃんの一番の仲良し、ということであるな」
「えへへ〜まあね〜。あ、でもほら、『そしてミクロマンのみんなへ』って書いてあるんだから、みんなも僕らとおんなじくらい仲良しなんだよ」
「オレ、おんなしくらい・・・」
「やかましいっ!!」
イザムに足払いを掛けられ、ウォルトは無防備に後頭部を机にぶっつけた。
「ね〜にいちゃ〜ん、はやくわけっこしようよ〜」
祐太がもう我慢できないといった顔で耕平を見上げる。
「うん、そうだな。・・・・・えっと・・・」
しかし何気なくチョコを取り上げようとした耕平の手は、チョコに触れる寸前ではたと止まった。
「・・・・これ、どうやったら7つに分けられるんだろう・・・?」
三角形を同じ大きさに七等分するのだって難しいのに、ましてやこれはハート型である。
ちゃ〜んと同じおっきさに分けろよな〜!などと机の上にあぐらをかいて言う者もあり、すっかり困り果てた耕平はエジソンに泣きついた。
「ねえエジソン助けてよ!どうやって分けたらいいのか僕わかんないよ!」
泣き付かれた方もまた、う〜むと首をひねる。
「それはまあ僕のマグネアームを駆使して計算をすれば正確に分割することは出来るのであるが・・・。ん〜、形状が複雑であるので、少々時間が掛かりそうであるなぁ」
このなんとも煮え切らない答えに、子供たちともうあと一名が一斉に不満の声を上げた。
「何とかはやくできないの?エジソン」
「はやく食べたいよ〜!」
「ああもうなんでもいい!オレが許す!だからはやいとこ適当に割ってくれよ!」
「適当と言ってもであるな・・・あ〜、ではまず、おおよその値を・・・・」
エジソンがしぶしぶマグネアームを起動させようとしたとき、
「あ、そうだ!」
急に祐太が大きな声を出した。
「うわっびっくりした・・・!なんだよ祐太、おどかすなよ!なにがそうだなんだよ?」
「うん、あのさにいちゃん、前おっきいおせんべでやったわけっこゲームやろうよ!」
「おせんべの、ゲーム・・・・・?」
耕平はしばらく腕を組んで首をひねっていたが、
「ああ!あれかぁ!」
と、これまた祐太に負けないくらい大きな声を出した。
「なに?なになになに?二人だけで納得してねぇで、俺達にも説明してくれよぅ!」
「あは、ごめんウォルト。これから説明するから、みんなも聞いててよね」
耕平はゲームの説明を始めた。
みんなでチョコレートの縁の好きなところに指を置いて目を閉じる。
それからチョコレートの真ん中をトンカチでたたく。
いろんな格好に割れたチョコのうち、自分が指を置いていたところのかけらをもらえる。
それを聞いたウォルトは、爛々と目を輝かせた。
「ええっ!?じゃあよ、自分が手置いてるところがどんなにおっきくなってもそれ全部丸ごともらえるのか!?誰も文句いわないのか!?」
「うん、そうだよ。そういうルールなんだよ。おもしろいでしょ」
「うっひょ〜〜〜っ!すげえすげえ!!どうしようオレ、そんなに喰えるかなあ!」
一体どんな大きさを想像しているのか、ウォルトは困ったように笑いながら頭をバリバリかいている。
「それじゃみんな、すきなとこおさえて」
祐太が号令を掛け、ミクロマン達はチョコの周りをトコトコと歩き始めた。
「オレは、ここだ!」
当然と言うべきかなんと言うべきか、誰よりも早く場所を決めたのはウォルトであった。
「いいかぁ、オレのがどんなにおっきくなっても文句いうなよな!?ルールなんだからな!」
まわりに向かってそんなことを言いながらハートの一番下の尖ったところに手を置く。
「誰が文句なんか言うものか。お前じゃあるまいし」
呆れたように言いながらイザムが手を置いたのは、「麻美より」の「麻」の字の左。
苦笑しながら「ミクロマンのみんなへ」の「ミ」の字の辺りに手を置いたのはアーサー。
「こうした偶然性にすべて任せてみるというのもなかなかに面白いのであ〜る」
エジソンは「麻美より」の「り」の字の少し上に。
耕平と祐太はそれぞれ、ハートの上の丸い部分に人差し指を置く。
「では、割る係は俺がやろう」
皆の位置が決まったところで、チョコの真ん中にオーディーンが飛び乗った。
「じゃ、オーディーンのばしょはここでいい?」
左手の人差し指でチョコの左下を押さえた祐太に
「ああ、頼むぞ祐太」
頷くと、オーディーンは片膝を突き拳を下に向けて構えた。
皆一斉に目を閉じる。
しっかりと閉じた目蓋の裏側に巨大なチョコのかけらを思い浮かべ、ウォルトは一人ニンマリとしていた。
・・・・半分・・・いや、もっと大きいかもしれねぇ・・・・・
「ハアァァァッ・・・!」
オーディーンが気合いを込める。
・・・・・それを全部一人で喰っていいなんて・・・・・
「テヤッッ!!」
・・・・・ああオレって・・・・・
バキィッ!!!
なんって幸せモンなんだぁ・・・・・・!!
心の中で歓喜の叫びを上げたと同時に
強い衝撃が来た。
ガクンと体が前に傾く。
ペチッ
手の平が何か固いものに当たった。
・・・・・・・・・?
そ〜っと開いた目にまず飛び込んできたのは、哀れむようにこちらを見ている仲間達の顔。
そろそろと下げた視線の先には大きく割れたチョコの谷間。
そして、その谷間に見える机の表面にベッタリと突かれた己の右手・・・。
これが小さな子供だったならワッと泣き出すところだろう。
だが、ウォルトは涙一つこぼさなかった。
なんとなれば本来、ミクロマンは涙が流せないのである。
細長く割れたチョコレートをかかえて何か声を掛けようとするアーサーを、イザムが視線で制した。
「ウォルト、かわいそうだよ!」
大きく割れたチョコレートを手に祐太が声を上げる。
「あのさウォルト、僕のちょっと分けて上げるよ」
そして同じくらいの大きさのチョコを手にした耕平が言った。
「あ、にいちゃん、ぼくもぼくも!」
「じゃあ祐太、この辺を上手く折って・・・」
「・・・・・・・待った!二人とも、待った!」
手をベタベタにしながら端を折ろうとしていた兄弟は、急に声を掛けられ、そろって手を止めた。
二人を止めたのはなんと当のウォルトであった。
「いいってことよ!二人の気持ちはありがたいが、これはこういうルールなんだ。仕方ねぇさ」
そんなことを言いながら、へへへ〜と笑う。
だがその顔はどう見ても、へへへ〜と泣いているようにしか見えなかった。
「ウォルト・・・」
「ああ〜!今日はなんだか腹一杯だわ!オレ先に戻ってるからよ。じゃな」
仲間達にメチャクチャに手をふってから、ウォルトはよたよたと歩き出した。
机の引き出しによじ登り中に入る。
姿が見えなくなった瞬間、中からゴチンッと音がしたが、覗き込もうとした耕平達の目の前で引き出しは閉められた。
あとには沈黙が残った。 深更、ミクロベース。
ウォルトは自分の部屋のベッドの上で、ぼんやりと物思いにふけっていた。
はぁぁあ・・・・・でっかかったなぁ・・・・あのチョコ・・・・・・・
甘く切ない思い出はいつまでも消えることなく。
あの字んとこ、どんな味がしたんだろうなぁ・・・・・色が違うんだから、もっと美味かったんだろうなぁ・・・・白かったから、ミルク味か・・・・そうじゃなかったら・・・・・・・・・
取り留めもなく果てしなく、また切りもなく。
ア〜ア・・・・考えててもしょうがねぇじゃねぇか・・・・
ウォルトはごろりと寝返りを打った。
・・・・・・もう寝よ
しかし、目を閉じたら閉じたで巨大なハートは目蓋の裏に鮮やかに蘇ってくる。
うーうーと呻きながら7回目の寝返りを打ったとき、突然入室コールが鳴った。
・・・誰だよ、こんな時間に・・・・・・・
やおら起きあがったウォルトは、のっそりと部屋を横切り、甚だ不機嫌そうな顔でドアを開けた。
「・・・・・んあ?」
「・・・やあ・・・こんばんは・・・」
そこには少々決まりの悪そうな顔をしたアーサーが一人で立っていた。
「こんな時間に済まない・・・あの」
アーサーは言葉を続けた。
だがウォルトは、その内容を全くといって良いほど聞いていなかった。
すでに意識は完璧なまでにアーサーの手の中にある物体に注ぎ込まれていた。
「ああそうなんだウォルト。用事というのはこれのことで・・・」
忘れもしないこの艶。
「・・・やはり君もこれを食べる権利があると、私は思ったんだ。それで・・・・・」
この色。
「・・・少しだけだけれどもこうして持ってきたんだ。だから」
この、香り!
「・・・もし良かったら、食べてはもらえない・・・」
「アーサー!」
ウォルトはアーサーを力いっぱい抱き締めた。
「ありがとう!ありがとな!やっぱりおまえって、ほんっとにいいヤツだぁ!」
チョコレートごと抱き締められてアーサーは目を白黒させたが、大喜びするウォルトに自分もニッコリと微笑んだ。
「ウォルト、私も君に喜んでもらえて嬉しいよ」
「うん、ほんとにオレ、嬉しい!」
ようやくアーサーから離れ手の中のチョコレートをキラキラした瞳で見つめるウォルトに、しかしアーサーは声を潜めて言った。
「なあウォルト、ところで一つ頼みがあるのだが・・・」
「んご?」
はやくも半分ほどチョコレートを口に突っ込んだウォルトは、首を傾げてアーサーを見た。
「済まないが、このことは誰にも言わないでおいてはくれないだろうか」
「んが?あんげが?」
アーサーはキョロリと廊下を振り返って言った。
「いや、その・・・・・・イザムに怒られるから」
そんなリーダーとも思えぬ言葉を残し、アーサーは足早に去っていった。
素晴らしきチョコレート!輝かしきチョコレート!
ベッドの上にひっくり返って、ウォルトは思いがけない幸運をしみじみと反芻していた。
あんなに美味いチョコなんて、今まで喰ったことねぇよ・・・・・・
思わず頬がだらしなくゆるむ。
と。
「んん?」
またもや来客を知らせるコールが鳴った。
チョコの甘い香りを必死で追い散らかしながら、ウォルトはドアへと向かった。
「どちらさん・・・・・・・・ごわっっ!?」
「・・・・・・・・・・・・なんだその顔は」
ドアの向こうに立っていたのは今もっとも会いたくない人物、正にそれそのものであった。
「どどどどうなしゃいました!?イザムしゃん!?!」
常にも増して様子のおかしいウォルトを、いつにも増して不機嫌そうな顔でイザムがジロリと睨む。
「・・・?何を騒いでいるんだ・・・?」
「い、いえ〜、なななんでもごじゃいましぇ・・・・」
「そんなことよりお前、これ、なんとかしろ」
「へ?」
不機嫌な顔のまま、イザムは両手を突きだした。その手の平の上には、細かく砕かれたチョコレートが山盛りになっている。
「・・・イザム、これ・・・・」
「耕平の机の上に散らかってたんだ。ちゃんと片付けておけ!」
そう言うとイザムはウォルトの手の上にチョコレートをぶちまけ、それ以上一言も発せずに踵を返した。
ウォルトは呆気にとられたまま暫しその背中を見送っていたが、やがてその頬にはじわじわと笑みが浮かび上がってきた。
「・・・・ありがとな!イザム!」
手を振るわけにはいかないので、廊下に半身を乗り出し大きな声で礼を言う。
返事はなかったが、ウォルトはしばらくイザムの走り去った方を笑顔で見つめていた。
全部で約140粒ほどあったチョコの破片を一粒残らず食べ尽くし、ウォルトはまたしみじみと幸せをかみしめていた。
ああいうちっちゃいチョコってのもなかなか良いもんだなぁ・・・・・なんせ、いっぱい喰えるってとこがいいよなぁ・・・・・・・・
うっとりしているとまた頬を緩んで来る。
あ、ヤベヤベ、宇宙一の色男が台無しだぜ・・・・・・・・
窓ガラスに映った自分の顔のあまりといえばあまりな有様に、手でほっぺたを押し上げて一生懸命真面目ヅラを作っていると、また部屋の入口のベルが鳴った。
「んお?」
慌ててベッドから飛び降りドアを開ける。
そこに立っていたのはエジソンであった。
「ウォルト、こんばんはなのであ〜る!」
「ン、ああ・・・?」
なぜかエジソンは妙にテンションが高かった。
「今夜は君に、大切な話をしにやってきたのである」
「え?なに?オセッキョウ??」
「いやいやいや、君のミクロ戦士としての能力についてであ〜る」
「はぁ?」
「我々の力の源であるミクロジウムはそれ自体が大きなエネルギーを持った物質だ。それは君も知っているな?」
「・・・おぅ」
「ただミクロジウムはそこにあるだけではパワーを発揮することは出来ない。そのパワーを武器や必殺技として実際に利用するためには、我々一人一人の強い精神力が必要なのである」
「そらまぁ、そうだ・・・」
「であるからして、一人でも精神的に弱体化しているメンバーがいると、ミクロジウムのパワーの利用率にロスが生じ、チーム全体としての戦力に多大なる影響が・・・・・」
「・・・待った!ちょっと待ってくれよエジソン」
いつまでたっても終わりそうにない話に、ウォルトはなんとかブレーキを掛けた。
「あのさ・・・なんかお前、大事な話してくれてるみたいだけどよ」
ポリポリと頭をかく。
「正直、なに言ってんのかオレ良くわかんねぇんだ。その、もっと簡単に話してもらえねぇかなあ」
心底困ったような顔をしているウォルトに、エジソンは一つため息をついて笑った。
「・・・・簡単に、ね・・・・・」
「うんうん頼むわ」
「ま、ようするに」
「ようするに?」
「・・・・・君にあんなしょぼくれた顔をされたらこっちが堪らない、ということであるよ!」
ハイどうぞ!などと言いながら、エジソンは背中に隠し持っていたチョコレートのかけらをウォルトの胸にドンと押し付けた。
「エジソン・・・・・」
「それを食べて早く元の君に戻ってくれ。君が暗い顔をしていると、チームとしてのバランスが悪いのである」
ウォルトは一瞬そのタレ目を大きく見開いたが、やがて少し俯き照れたように笑った。
「・・・・・へへ。サンキュ。これで、元気百倍だぜ」
「うむうむ」
エジソンは満足そうに何度も頷いた。
「・・・しかしウォルト、これはあくまでも例外的な措置であるということを忘れないでほしいのである。みんなにはナイショ、なのであ〜る」
人差し指を立ててナイショ、を強調してから、エジソンは意気揚々と引き揚げていった。
ウォルトはベッドに座って、エジソンが置いていったチョコレートを食べていた。
もぐもぐ口を動かしながら考える。
ほんとはオレ、こんな風にチョコ喰えるはずがなかったんだよな・・・・・あれはそういうルールだったんだし・・・・・
なのに、アーサーも、イザムも、エジソンも・・・・・
みんなオレのために・・・・。
しみじみと最後の一口を飲み下したとき、またもやベルが鳴った。
まさか・・・!
飛び付くようにドアを開けるとそこには、チョコレート・・・・色の巨漢が苦虫を噛みつぶしたような顔で立っていた。
「おいウォルト、なんだあの顔は」
「う」
「子供たちの前でみっともないだろうが」
「うう」
「いつまでもそんな顔をしてるんじゃない。ほら、これをやるから、いい加減しゃんとしろ」
「ううう」
「・・・・・今回だけだぞ」
チョコレートを手渡されて、ウォルトの顔がみるみる歪んだ。
「う、ううう・・・・・・・うわあぁぁぁんっ!!!」
「お、おいウォルト!?」
ウォルトはミクロ泣きに泣いた。
「わぁぁああああんっ!お、おまえら、なんでそんなにいいヤツばっかりなんだぁっ!!オレ、今日ほどおまえらが仲間で良かったって思ったことねぇよぉぉっ!!!おぉぉぉんっ!!おぉぉぉぉぉんっ!!!」
「・・・・あのなぁ、チョコレートぐらいで泣くな・・・。それに今日ほどって・・・、お前、今まで俺達のこと、一体どう思ってたんだ!?」
あきれ果てているオーディーンの目の前で、ウォルトはいつまでもいつまでも泣き続けた。2月15日早朝。
「やあやあキミ達、おはようさん!いつまでも寝坊してちゃいかんよ〜!」
「え・・・う〜ん、もう朝・・・・?」
掛け布団を勢い良く引き剥がされた耕平と祐太は、寒さに思わずギュッと体を丸めた。
布団の端を掴んでベッドの足元の方に立ち、ニコニコ笑っている小さな人物を寝ぼけ眼で見やる。
「あれ・・・?ウォルト・・・?どうしたのさ、こんな早く・・・」
「ウォルトなのに、もうおきてんの・・・?」
「む。なのに、とは失敬な。オレ様はいつでも早寝早起き!」
ウォルトは得意げに胸を張った。
「ほら、起きた起きた!」
二人を急かしながらその場でジョギングのように足踏みをする。
「ねぇ、にいちゃぁん・・・ウォルト、なんかヘンだよ・・・」
「う〜ん・・・・・・」
やたらと元気なウォルトを見ているうちにだんだんと目が覚めてきた耕平は、昨夜の出来事を思い出した。
「祐太・・・あれのせいじゃないかな」
「あれって?」
「ほら・・・・」
耕平、祐太、大丈夫。私がこれを少し分けてくるから。
俺がこれ、ちょっと削って持ってってやる。
心配ないのであるよ。僕がこれを持ってゆけば。
俺がこれを持っていくからな、そんなに気に病まないでくれ。
「・・・あ、そか!みんな・・・」
だが二人とも、これはやはりルールには外れることだから、他のみんなには秘密にしてくれないだろうか。済まない。たのむ。
このことは他のやつらには黙っててくれ。いいな。
あ〜、この件に関してはあくまでも僕個人の考えということであるからして・・・。みんなにはナイショにしておいてほしいのであ〜る。
もっともこれは俺が一人で勝手にやることだからな、他の連中には言わないでおいてくれ。頼んだぞ。
「じゃ、みんなひとりっつ行ったんだ!」
「そういうことだよな」
くふふふ、と兄弟は楽しそうに笑った。
「あん?二人とも、なに笑ってんだ?」
「ううん!なんでもないよ!」
「なんでもな〜い!」
声を揃えた子供たちに、ウォルトは不思議そうに首を傾げた。
結局ミクロマン達の中で、バレンタインのチョコレートを一番多く食べたのはウォルトであった。
仲間達の友情の証として、ウォルトの体重はその後10分の何グラムか増加したという。  

                                       
=了=



 すみません(泣)。 初めて主人公をやってもらったというのに、
ウォルトの精神年齢の低下に歯止めが掛からず、とうとう小学生以下になってしまいました(あああ)。
結果としてウォルトが一番チョコを沢山食べられたということで(?)、どうかお許し下さいませ〜(泣)。
ところで、「ミクロ泣き」というのはたぶん、(新生児のように)涙の出ない泣き方なのだと思います。書いている本人が「思います」ではダメなのですが(汗)。  ■書いた人/GIENさん■